もりじゅんの読書ブログ

読んだことない人には面白そうと、読んだことある人にはヒントの1つをと、作品を紹介できたらと思います

ネタバレあり

地獄よりも地獄的な 芥川龍之介「地獄変」のあらすじと概要

『芥川龍之介短篇集』 ジェイ・ルービン編 村上春樹序 新潮社 本書の編者・ジェイ・ルービンは冒頭に書いた「芥川龍之介と世界文学」という概説の中で、「地獄変」について《芥川の作品の中で一編しか後世に残せないとしたら、この作品だろう》と評価してい…

『人間失格』や『斜陽』のプロトタイプの短編 太宰治「ヴィヨンの妻」のあらすじと面白がれるポイントのご紹介

『太宰治全集8』 ちくま文庫 原稿用紙で57枚の太宰治後期の短編、「ヴィヨンの妻」が好きです。理由は、太宰は女主人公の一人称の小説がうまいこと(他に「女生徒」『斜陽』など)、のちに発表される『斜陽』『人間失格』内に含まれる要素の萌芽が見られる…

「自分は無意味である」から生じる生きる力 モーム『人間の絆』

W・サマセット・モームの世界的ベストセラーの一つ、金原瑞人訳『人間の絆』(新潮文庫)を読み終えました。 『人間の絆』 サマセット・モーム 金原瑞人訳 新潮文庫 上下巻 作品後にモームが寄せている「序」でも触れられているように、自伝的小説です。 モ…

村上春樹がチャリティーで朗読した理由 「めくらやなぎと、眠る女」(短編集『レキシントンの幽霊』)

イントロダクション 昨年村上春樹と川上未映子によるインタビュー集『みみずくは黄昏れに飛びたつ』を読んでいて、1995年阪神大震災後、神戸と芦屋での2回のチャリティー朗読会の合間に短編「めくらやなぎと眠る女」が短く書き直され、「めくらやなぎと、眠…

綺麗事だけ視るか?綺麗事以外も視れるか? モーム『月と六ペンス』から考える

はじめに W・サマセット・モーム『月と六ペンス』を読み終えました。イギリス文学はディケンズをちょっぴり齧った程度。だいぶ考えさせられました。久々に読みごたえのある内容というかテーマ。スタイルと文体は若干古臭い感じはしますが、それでもエンター…

村上春樹「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」(『一人称単数』)を考察する

前回の記事で芥川龍之介「歯車」を取り上げたのは、村上春樹「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」という短編を再読してみたかったからでもあります。 この短編は村上春樹の現最新短編集『一人称単数』(2020)に所収されていて、8つの短編の中でも一…

太宰治『斜陽』のあらすじ、解説と面白がれるポイント紹介

太宰治全集9 ちくま文庫 太宰治のプロフィール 『斜陽』の背景 主要登場人物 あらすじ 解説、面白がれるポイント まとめ 太宰治のプロフィール 1909年(明治四十二年)、青森・津軽の大地主の家に生まれ育ちました。東京帝国大学(現東京大学)文学部に進学…

村上春樹「かえるくん、東京を救う」(『神の子どもたちはみな踊る』)

アパートの部屋に戻ると、身長2m以上ある蛙が立っていた。 「ぼくのことはかえるくんと呼んで下さい」 ここから始まる村上春樹「かえるくん、東京を救う」という短編について少しお話ししたいと思います。 このお話は1995年2月18日午前8時半頃、東京に直下…

村上春樹「UFOが釧路に降りる」(『神の子どもたちはみな踊る』)

「UFOが釧路に降りる」という短編を解説してみたいと思います。 理由は2つありまして、1つは『神の子どもたちはみな踊る』のスタートを飾る短編であること、もう1つは解説らしきものをできそうな予感がすることです。 この作品はほぼ時系列と執筆順とが同じ…

村上春樹「蜂蜜パイ」(『神の子どもたちはみな踊る』)

はじめまして。 もりじゅんと申します。 文芸解説をしてみたいと思いブログ開設しました。 偏った視点からの偏った語りになるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 神の子どもたちはみな踊る 新潮文庫 初回に取り上げるのは村上春樹『神の子ども…