もりじゅんの読書ブログ

読んだことない人には面白そうと、読んだことある人にはヒントの1つをと、作品を紹介できたらと思います

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

奇書を超えた傑作? 原作と映画はどう違う? アラスター・グレイ『哀れなるものたち』

『哀れなるものたち』 アラスター・グレイ 高橋和久訳 ハヤカワ文庫 カバー型帯 知人に「面白いよ」と教えられて2月下旬、ヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーン主演の映画、『哀れなるものたち』を観てきました。 www.searchlightpictures.jp 2時間半…

ブレイディみかこ『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』

『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』 ブレイディみかこ 文藝春秋 シンパシーとエンパシー みなさんは「共感」という日本語、どのように使われますか。 「今の日本の政治家の話し方にはまったく共感できない」 「この監督の一つ前の作品には…

「自分は無意味である」から生じる生きる力 モーム『人間の絆』

W・サマセット・モームの世界的ベストセラーの一つ、金原瑞人訳『人間の絆』(新潮文庫)を読み終えました。 『人間の絆』 サマセット・モーム 金原瑞人訳 新潮文庫 上下巻 作品後にモームが寄せている「序」でも触れられているように、自伝的小説です。 モ…

弓の道におけるドラゴンボール的寓話 中島敦「名人伝」

たまに発作のように中島敦の小品を読みたくなるときがあります。小品といっても美しく磨かれた珠のような佳作。佳作というか名作。無駄なく、欠けているものもない構成美と、「何々である」と野暮な解説をさせる気も失せる深淵さ。謙虚さ。そんなものを湛え…